見知らぬ街の朝はいい

 昨夜は飲みすぎて、友達の家に泊めてもらった。女の家にはすべてがあり(前髪を留めておくピンも、毛羽立たないコットンも、ウォータープルーフのマスカラがしっかり落ちるメイクリムーバーも、すべて!)、本当に助かった。

言われるがままに水を飲み、借りた部屋着に着替え、そのまま深く眠って、気がついたら朝だった。天窓から落ちる陽が心地よかった。二人してむくんだまぶたを精一杯かっぴらきながらいそいそと化粧をしているとき、ああ、友達ってなんてありがたい存在なのだろうと、心から思った。

 今、見知らぬ街のサンマルクでこれを書いている。友達はきれいな服を着て仕事へ出向いてしまった。本当はべつの純喫茶に入るつもりで歩いてきたのだけれど、この街の個人経営店は全体的に、インターネットに記載している開店時間など忘れているみたいだったので、とりあえず近くのサンマルクに入った。(久しぶりに入って思ったけれど、サンマルクは安くて美味しくて、案外席が広くて居心地がいい。)向かいにある古本屋らしき店のシャッターが開くまでは、とりあえずここにいようと思う。適当に煙草でも買って、喫茶店が開いたら午前中はそこで本を読もう。今日は暑いから。

 見知らぬ街の朝はいい。日曜だから、なんとなく街全体の空気がゆるくて、そこもまたいい。自転車に乗った近隣住民らしきおじいちゃんとか、目に眠気を湛えたままスーパーに入っていく親子連れなんかが、急ぐでもなく行き交っている。私の住んでいる辺りではあまり見ることができない光景だ。ずっとここに住んでいるであろう人たちと、くっきりとした生活の気配。ちょっと懐かしい気分になる。泥酔なんて最悪だけど、たまには知らない街からの朝帰りも悪くないなと思った。(翌朝仕事があるにも関わらず快く泊めてくれた友達、本当にどうもありがとう)